第18回 夏期広告セミナー

『戦略PR代理店』に進化する!?
株式会社ベクトル代表取締役 CEO西江肇司氏
PR活動をトータルにサポート

株式会社ベクトルは持ち株会社で、多くの機能会社・事業を傘下に持つ。効果的にモノを広める方法・サービスをグループ各社により提供している。記者発表からソーシャルメディアの拡散まで、生活者に向けPR活動をトータルにサポートしている。経営理念は「いいモノを広めて人々を幸せにすること」。特にPRテクノロジー、PR と Web マーケティングによる戦略PRを得意としている。「戦略PR」という言葉は2008年頃から使用されているが、企業の広報を窓口とする既存のPR会社とは異なり、我々は宣伝部の予算で動く。これまでの広報を超え、モノを広めて購買につなげるコミュニケーション戦略の立案・実施を担い、レバレッジ効果のある実行力を持つ点が特長である。業務の4割は代理店との協業であり、我々はアカウントを取りに行く発想はない。PRの領域における予算内で、最も効果的な提案を行うことを使命と考える。2010年までで約800のプロジェクトに参画。今後3?4年で、グループ社内で2000件関与を目指す。日本では戦略PR会社としての経常利益はほぼ1位なので、5年後にアジアナンバーワンになることが目標。

戦略PRで重要なニューステクノロジー

スマホの普及でニュースを見る機会が増加。消費者の生活がニュースを中心に動く時代の今、クライアントの情報をいかにニュースに代えて生活者に訴求するかという「情報開発」が重要。我々はメディアが注目する訴求ポイントの整理からPRストーリーを作り、効果的に「情報加工」を行う。加工した情報をニュース化し、企業と生活者を結びつける。2年ほど前まではブロガーの影響力も大きかったが、最近ではニュースの広げ方がポイントである。例えばスシローの場合、情報加工し地道にメディア露出をして、2年前で広告換算すると約100億円の効果を生む。モノを伝える時には、その核心を一度シンプルに置換することが大切だ。メディアに載りやすい5~6件のコンテキストマップ(ブランドマップ)を作り、1クール当りのメディアネットワークを構築。ニュースに取り上げられ易い情報設計を行う。

IR業界におけるPR事業「IRバンク」

IRでも株価が高い会社ほどニュースリリースを多用する。つまりニュースの出し方やネーミングが株価を左右する時代になっている。現在は従来型のサービスにITを駆使した「PR」を組合わせ、ワンストップ型のIRソリューションサービスも行っている。海外で上場しているPR会社はIR系が主だが、日本のIR業界ではPR会社がほとんど進出しておらず、今後の需要が期待できる。

戦略PRとWeb回りをつなげる
〈ヤマキ割烹白だし〉事例紹介:戦略PR と Web 施策をキーワード連動させた例。実際に使って商品の良さを理解してもらい、市場全体の成長へつなげた。①「白だし」をキーワードにした戦略PR…メディアに取り上げられ易い情報コンテンツを開発し、料理情報に絡めて発信。TVなどで取り上げられ、白だしを話題化。オンラインメディア等にも登場させ、700を超える情報を掲載。検索量も通常の5?8倍に増加した。② Web 回りの施策…SEO対策とリスティング広告を行い、検索画面における商品の占有率を向上。サイト内に和洋中のレシピコンテンツを作成。主婦ブロガーを集めた試食会を実施し、ブログに感想を書いてもらった。「白だし」というキーワードを軸に戦略的に話題化しつつ、ウェブ回りの受皿で自社開発コンテンツに誘導。その結果、それまでの5倍の売上げを記録した。

コンシューマー・メディアを意識的に攻略する

1つの事実も見せ方により伝わり方が違ってくる。例えば「ビックロ」の例では、実際はただユニクロとビックカメラが同じテナントになっただけ。それを「ビックロ」というネーミングで上手く時流化した。こういう複合したPRは効果的だが、思い切った企画は宣伝部や広報部の次元では生まれにくい。ユニクロの幹部に情報発信企業という自覚があり、社長がPR目線を持つ会社はこうしたことも実現し易い。だから商品自体に大きな変化がなくとも、柔軟な情報発信が可能になる。今、原宿などでポップコーンが流行しているが、3店舗目のPRではポップコーン戦争という切り口を演出。メディアが好むキーワードを開発し、TV受けを狙った。バーニーズ・ニューヨークのPRでは、副都心線開通とそれに伴う新宿エリア活況のニュースに合わせ展開。キーワード×エリア啓蒙型のPRとした。

パブリックアフェアーズや、海外事業展開も

最近は政府や行政に働きかけるガバメントリレーションズやパブリックアフェアーズなどにも取り組んでいる。日本ではまだPR会社が踏み込んでいない領域。例えば次世代のエネルギー社会システムを模索する「スマートシティプロジェクト」でも、世論を形成していくPR活動や政策意思決定者へのロビー活動を実施。パブリックアフェアーズでは無電柱化プロジェクトなどに参加。また海外展開では、3年ほど前から中国の上海・北京、香港で展開。今年からベトナム、タイ、インドネシアにも進出した。Cool Japan や Visit Japan、日航ホテルのアジア戦略の他、東京ガールズコレクション等のPR活動を請け負う。JINS上海初出店では流行ワードを創出し、中国でメガネ女子(伊達メガネ)を広めた。さらにメディア映えする画作り、キャスティング、多様な切り口、SNSの効果的な活用を念頭に展開。中国は国土があまりに広い為、マスなどの広告での認知は困難。イベント&記者発表で、メディアに載せつつ、Web拡散という手法がベースとなる。PR×ePR×SPRという考え方だ。日本では便宜上戦略PRと称しているが、本来は戦略コミュニケーションが正しい。オバマ大統領が選挙戦でも展開した作戦と同じである。またアジアにおける九州観光促進では、まず「九州」という言葉を様々なメディアで広め、観光コースを啓蒙していった。香港で「一蘭」ブームを仕掛けたり、Visit Japan では逆に日本ブームが起きているタイやマレーシアのメディアを連れて来てPRを実施した。

PRの最新トレンド

これからのポイントは動画。映画の予告をP Vで見せるように、ニュースリリースもビデオになっていくだろう。ニュースリリースもタグ付けされて動画で紹介されて行く。CMを作らなくても動画で伝えたいことをメッセージでき、ネット広告とリンクさせられるので効果的である。ニュースリリース配信後の施策としてネイティブニュースの活用も有効。広告業界でもネイティブアドが注目されているが、PRの場合はネイティブニュースで拡散。「Buzz News」や「CuRAZY」といったSNSの拡散元になるキュレーションサイト等との連動が課題となる。これからは、戦略PR×アドテク×スマホ動画の施策が鍵となっていくだろう。動画ブームを踏まえて、動画のクラウドワークスサービスを提供する「VIDEO TIMES」も立ち上げ、マッチング型映像制作も行う。また、戦略PR×アドテクを行うため、マイクロアド社との合弁会社「ニューステクノロジー社」も設立し、アドテク分野も強化。また個人投資家施策に役立つIR動画を制作するIR-TVも設立。目論見書だと30分もかかるところを動画だと3分で理解できるので広くPRに役立つ。企業が発信する動画制作にも潜在的な需要が見込まれる。例えば有名な経済評論家が推薦する銘柄というような内容で作ると、ネット広告とネイティブニュースが同時に展開できる。このように我々のビジネスチャンスも動画をキーに今後も新しい可能性が広がっていくと考えられる。

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