第15回 夏期広告セミナー

『ソーシャルメディアマーケティング総合講座』

第15回OAAA夏期広告セミナーが7月26日電通関西支社12階大ホールで開催された。
今回はソーシャルメディアマーケティングの第一人者、トライバルメディアハウス代表取締役社長の池田紀行氏をお招きして、意外に知られていないソーシャルメディアの特性や課題について講演していただいた。

SMMを考える前におさらい

SNSはまず大前提として消費者のための場で、企業や広告業界側はそこでマーケティングさせていただくという感覚を持っておくべきである。ツイッターを使って新商品の認知を向上させたいというオーダーがよくあるが、ツイッターはソーシャルグラフ(ソーシャルメディア上での人間関係)の規模が小さく、マス商材の認知向上には強みを発揮しづらい。クロスメディアの中ではそれぞれのメディアが各役割を担っているので、短期的に商品の売上を求めるなら、ソーシャルはやらないという勇気を持つことも大切になる。

ネットナビゲーションの変化

最近ネットのトラフィックは検索中心の時代から、検索とソーシャルメディアの時代になった。そのためソーシャルメディアでの滞在時間が急増し、受動的な時間が大量に生産される傾向にある。検索時代では検索して表示されない企業や商品は存在しないも同然だったが、SMMでは誰かが会話しないと情報は伝わらないので、会話されないブランドは存在していないも同然。一方会話されると、その友人の興味が喚起される可能性が高まる。ECサイトではすべての商品のレコメンドに人と人とのコミュニケーションを介在させるソーシャルコマース化が進んでおり、ソーシャルコマース化したECサイトは、通常の数倍の買い上げ率になったというデータもある。

ソーシャルメディアの最新状況

SMM先進国のアメリカではフェイスブック人口が1億5千万人と、実に人口50%という驚異の普及率だ。日本ではツイッターユーザーは推定1500万人にまで成長している。ちなみに日本は世界一のツイッター王国。ハッシュタグを使って他人とTV番組やニュースについて会話するなど、テレビとのクロスメディアプランには可能性が広がる。
この他ユーチューブ、アメブロ、ウィキペディア、Yahoo!知恵袋、など日本はソーシャルメディアが多彩。BtoC企業においても今後、広告・宣伝・マーケティング活動にはツイッターやフェイスブックが不可欠と言えるが、開設すること自体が目的化しても戦略がなければ意味はない。

SMMを成功に導く7つのポイント

①消費者の生の声を聞く・・・まずは傾聴戦略。アメリカでは既に企業にブログやツイッターをモニタリングする部署を置き、商品開発や業務改善、広告宣伝などに活かされている。日本でもこうした動きが出始めている。

②最愛のポジションを取りに行く・・・低コストのフェイスブックを有効活用して潜在顧客と関係性を作り、ニーズが顕在化した瞬間に商品を想起してもらう。例)リクルート「SUUMO」、伊藤ハム「ハム係長」、USJ

③SMMは万能でないことを知る・・・ソーシャルでサイトへの流入や資料請求を増やすのは効率的でない。認知を向上させるマスメディア、ニーズが顕在化している人を誘導するリスティング広告、まだ興味のない人を育成していくSMMなど、それぞれの目的に応じた施策の組み合わせが大切だ。

④ソーシャルグラフ(ソーシャルメディア上での人間関係)を強く意識する・・・ソーシャルのプランニングをする際に何をしたいのかを明確にしておくこと。面白いコンテンツやキャンペーンで単純に情報の拡散を図るのは難しい。ユーザーが情報をソーシャルグラフに出す必然性が戦略的に考えられているAXE「告白の塔」は好例。

⑤ユーザーとエンゲージする・・・ユーザーと中長期的に関係を作っていくアドボカシー型のSMMでは次のようなエンゲージの方向性がある。A:ユーザーがエンゲージしたくなるネタ提供する。例)AXE告白の塔キャンペーン、B:企業からエンゲージしていく。例)貝印のカイタッチプロジェクト、C:ユーザー同士がエンゲージする場を提供する。例)ベネッセウィメンズパーク

⑥感情を揺さぶる・・・感情が動かなければ口コミは絶対発生しないので、バイラルキャンペーンの場合、感情を揺さぶるコンテンツになっているか、しっかりと確認する必要がある。
⑦相手はあなたと同じ生身の人間であるということ・・・企業同士がソーシャルメディア上で行う人間味あるやりとりにユーザーの心も動く。デジタル、次世代というイメージのソーシャルだが、実は人間くさいマーケティングなのである。

ソーシャルメディア時代のリスクと対策

ブログ時代は小火から炎上に至るまでに3日間程度の時間がかかったが、Twitter時代の現在では、小火から炎上までわずか数時間というケースもあり、スピード勝負。昨今は一般作業員やアルバイトの不適切発言や情報漏えいによる炎上事故が多発しているため、ガイドラインが必要だ。

SMM効果測定

効果測定における手段の目的化が蔓延し、目的が曖昧だから評価できず、結果、改善に生かされていない。ブランド好意度や純粋想起率を測るコミュニケーション指標をKGIとして定め、リーチやエンゲージ、口コミの評判など、KGIの検証としてKPI測定があるという認識が必要。また中長期にユーザーとの関係性を育成するソーシャルでは、費用対効果と投資対効果は分けて分析するべきである。

今世の中はすべてソーシャル化に向かっていて、すべてのモノやコトにコミュニケーションが介在していく。だからソーシャルをやる、やらないというより、自然にプランニングに活かしていっていただきたいと思う。

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