第19回 OAAA 交通・屋外広告セミナー

第19回目を迎えるOAAA交通・屋外広告セミナーは、昨年同様にオンラインセミナーの形をとって2025年2月28日(金)に開催した。
今回のセミナーでは、関西エリアで大規模なOOH展開をされているサントリーホールディングス様から、原点に立ち返ってのOOHの魅力や、それを選ぶ理由、関西エリアで話題になった展開(飲食店支援のためのリージョナルな展開)など、コミュニケーションデザイン本部 宣伝部 課長の佐藤 賢 氏にご講演いただいた。
昨今、デジタルサイネージやプログラマチックOOHに注目が集まるところではあるが、約150名もの聴講者からは、「非常に勉強になった」「OOHの強みがよくわかった」など、好評をいただいた。

 

テーマ/ 「サントリーが語る、OOHを選ぶ理由。OOHの価値や役割について」

講師/  佐藤 賢 氏                                                                  (サントリーホールディングス株式会社 コミュニケーションデザイン本部 宣伝部 課長)

 

1.サントリー宣伝部のDNA

サントリーの宣伝部は、①豊かな生活文化の創造、②Etwas Neues(何か新しいこと)、③人間らしくやりたいな、を大切にしている。①はスペックだけでなく、商品のある豊かな生活文化やライフスタイルを打ち出していくこと。②は佐治敬三が大切にしていた言葉で、世の中にない新しいことにチャレンジしようという意味だ。③はどんな時でも人に寄り添っていくという強い想いで、時代のモーメントに寄り添うメッセージを発信してきた。

2.注目すべき環境変化

サントリーの広告は「人生への応援歌」でありたいという志があり、環境の変化に即した広告活動を模索し続けている。飲料業界では市場飽和による同質化から、モノ(商品)での差別化が困難になっている。この課題解決には、ファンを作ること、LTVの向上が広告のミッションとなる。

デジタルにおいては自分の興味・関心のあることや、信じられる第三者からの情報しか受け付けず、商品との偶然の出会いが少なくなっている(但し推し活などの応援消費は活性化)。しかし最近では若年層を中心に“アルゴリズム外し”が増加。SNSなどのアカウントをリセットして異なる環境を求める人も増えている。情報収集に合理性を求める一方で偶然の出会いも期待されており、この傾向はチャンスの兆しと捉えている。

3.広告活動の考え方・OOH事例

広く告げる広告 

私達の広告活動は主に、広く告げる広告、絆を創る広告に分けられる。前者はいかに多くの人にリーチするかが重要なので効率化がテーマ。後者は熱量や感動、ときめきといった数字では測れないものが指標となる。まず“広く告げる広告”例を紹介する。

➀大量リーチ獲得交通媒体はTV、デジタルに次いで大量の生活者との接点を作り出すことができ、弊社の重要な戦略のひとつとなっている。

➁セレンディピティメディア街中で偶然の出会いを演出でき、TV、デジタルに次ぐリーチ獲得が可能だ。ターゲティングできる時代になるほど、偶然の出会いを起こせるマスメディアが必要になる。

➂ビッグフォーマットの活用ビッグフォーマットでの露出はOOH最大の強みだ。東京・新宿に掲出した45mもあるBOSSの巨大サイネージは、音も流れるので強制視認性が非常に高い。昨年大阪では、当社初の“まど上レーンジャック”も実施した。

➃一等地での展開盛り場、街中で目立つ位置、ビッグフォーマットを条件に媒体を選定。直近では大阪のお初天神でタコハイの広告を掲出した。一等地で行うことで、その街のシンボルになるような広告を目指している。

➄ロケーション活用OOHは周辺の環境を活用することで効果が倍増する。例えば特茶の例では、長い階段の壁面に広告を掲出。掲出環境も含めて考える表現にはこの先も期待される。

➅生活者のモーメントを捉えた展開金麦の駅広告では、帰宅時にしか目に入らない面に掲出することで、”帰れば金麦”のブランドメッセージの最大浸透化を図った。こうした生活者のモーメントを捉えた展開は、飲用意向や購入意向の獲得、さらには行動喚起まで起こせる。

➆天候と連動したフレキシブルな展開レモンサワーの広告では、晴れ、気温30℃以上の配信条件でDOOHを実施。高い飲用意向を獲得した。広告活動の効率化は、デジタルサイネージならではの強みだ。

コロナを経てOOHでも接触人数の可視化が求められているが、 データ計測は“広く告げる広告”の課題である。接点によって計測できるツールが異なるので単純な横並び比較ができない、未来永劫使える指標/業界の統一指標がないことが主な原因だ。しかし日本のDOOH市場規模拡大に伴い、1imp=1視認者が新たな指標として浸透してきた。                                               そこで弊社でもLIVE BOARD様の協力を得て、独自の指標を策定。位置情報データでの人数捕捉×カメラ計測による媒体視認率⇒すべてのOOH媒体imp(VAC)に適応できないかを実証実験している。さらにLIVE BOARD外のDOOH、ポスター媒体を含めたOOH媒体横断の指標化も推進。接触者の可視化に加え、接触者ベースでの効果測定を目指している。これらが整備されることで、メディア統合で考えるさらなる効率化が図れる。

絆を創る広告 

OOHは絆を創りやすい広告だ。場所やデジタルの力を利用した当社の事例を紹介する。

➀聖地を利用した展開クレヨンしんちゃんの住む町・埼玉県春日部駅に「クラフトボス×クレヨンしんちゃん」の広告を掲出。オリジナルムービーも同時展開し話題になった。ブランド×コンテンツ×場所でファンの心理をくすぐり、好感度UPに貢献した。

➁隠れた広告スーパー猫の日に実施したボス猫キャップのキャンペーンでは、あえて目につかない原宿の路地裏に、迷い猫風の景品告知ポスターを掲示。見つけた人が思わず広めたくなる心理を狙い、SNSで話題になった。

➂SNSを活用した取り組みエナジードリンク「ZONe」の広告では、渋谷とリオデジャネイロでOOHを同時掲出。Xで大きな反響を得た。その場でしか接触できないOOH でも、SNSを使えばリーチを起こせる。OOHはお手軽に話題化することができるメディアだ。

OOHはセレンディピティな出会いを創出し、接触者の共感・話題化によってブランド好意を高められる。デジタル時代の今、こうした要素を組み合わせながら未来のお客様を創っていきたい。

人生には飲食店がいる 

これはコロナ禍で苦境に陥った飲食店様を応援する活動で、人生のさまざまな場面で飲食店に支えられてきたことを伝えるコミュニケーションにしたいと考えた。2021から現在まで、ポスター、OOH、TV、新聞・雑誌等、さまざまなメデイアで展開。特にOOH・シティスケープ®は、飲食店の最も近くでエールを送り、通行する人にも認識してもらえた。多くの方から感謝の言葉をいただき、改めてメインメディアであるOOHのパワーを実感した。

この活動を経て「OOHは街そのもの。街は、人々の生活そのもの」だと感じた。今後も人々の生活を反映するOOHを通して豊かな生活文化を創造し、オモロイことをしようという精神で「人生の応援歌」を皆様と一緒に届けていきたい。

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