第40回 OAAAクリエイティブ研究会

「“大阪クリエイティブ魂”を引き継ぐ、平成と令和の進化系」

第40回OAAAクリエイティブ研究会は、2021年12月3日(金)に、139名の参加登録者に対してオンラインセミナーの形をとって開催した。今回のテーマは「大阪のクリエイティブ魂を引き継ぐ」。クリエイティブの哲学やビジネスの取組み方を、個性あふれるベテランと若手の代表として、古川氏、小堀氏のそれぞれの視点から大いに語っていただいた。

第1部:電通関西支社 グループ・クリエーティブディレクター/CMプランナー/コピーライター 

講師:古川 雅之氏

 

『無視されない広告』

 僕が一番こだわっているのは、“無視されない広告”を作ることだ。もともと広告は積極的に見ようと思って見られるものではないが、マスもデジタルもほとんどの広告がスルーされていく時代、無視されないものを作らないと意味がない。また東京にはマネのできないクリエイティブで、関西からびっくりさせてやろうという思いもある。そして、できればどんな課題もユーモアで解決したい。最近はデータ起点でアウトプットまでデータに終始し、インサイトの深堀りや調査が重要視され過ぎてるんじゃないかなとも思う。カスタマーはそんなに送り手の思い描いた通りにはジャーニーをしないんじゃないか。なぜなら自分自身がそうではないから。「正しい」けれど届かないではよくない。人々は日々広告に対するスルー力を増しており、そことの戦いが重要だと思う。

■ケーススタディ:キンチョウの新聞広告とラジオ-CM

【蚊文字】目標は手が止まる新聞広告。スルーされない広告を目指して、2015年にキンチョウの新聞広告「蚊文字」を作った。飛んでいる蚊を数字の順につなぐと文字が現れる。         参加型というか滞在型というか、紙面に2,3分留まってパズルを解いてもらう。そして読者の労力に対して「何も報いない」というサービス精神。これが思いの外SNSで拡散された。

【超難解折り紙】2017年に制作した「超難解折り紙」は墨に近い黒一色の広告。URLへ飛ぶと1時間もの折り方動画が用意されており、折っていくとそれはリアルなゴキブリが完成する。  真剣に取り組むと90分ぐらいかかる。しかも手が真っ黒になる。難解な上に完成するとコレか、というのでまたSNSで取り上げられ大きな話題に。キンチョウの新聞広告は何かやってくるぞ、次はなんだ?みたいな空気が生まれてきた。

【買うまでが広告です】2018年には「読者の役割とは」と大上段に構えて、意見広告の体をなしてまことしやかに語る広告を制作。帰るまでが遠足です、が発想の素。         「優秀な〇〇新聞の読者ならお分かりだと思うが」「今や買うだけではなく、拡散されるまでが広告だ」とどこまでも高飛車に。拡散用のサービスも忘れずに。

【新元号キンチョール】2019年に元号が変わるタイミングで掲載。「キンチョール」と書かれた額をかざすパロディ広告。みなが思いつきそうだけどやるかどうか。           新元号発表当日の朝刊に掲載したので(運よく4月1日のエイプリルフール)、当日午前11時過ぎの発表までの間SNSは大いに賑わった。

【ケースバイケース広告】2020年は世の中がコロナという初めての危機に直面した。掲載日にどういう状況になっているか受け手のコンディションが予測不可能な中でのユーモアは    ムツカシイ。「どうしたらいいかわからない」のは世の中もみんな同じだと、「ぶっちゃけて」「正直に」共有することにした。状況ごとに企画案制作し、QRコードで見に行ける。    自分が積極的に見に行くというワンクッションがあって、クレームなどもなくむしろ好意的に受け止められた。「キンチョウ」というブランドが発していること、という許容も見られる。

【いま、いいよね。一方通行の新聞広告】今年の日経広告賞大賞をいただいた広告。ネット広告をディスりながら新聞広告もディスっているというもの。デジタル広告はこんなあこぎなことをやっているということを提示し、その点新聞広告はいいよね、一方通行で。と言いながら躍起になってホームページへ誘導する。結果、すべてを敵に回す自己矛盾(笑)。行った先はインターネット1.0のいつの時代や!?という世界。壁紙ダウンロードや、懐かしいソースコードでのマニアックなお遊びも隠れていて、そこまでもネット民たちが発見してくれてSNSで火がついた。新聞広告なのに、まるでデジタル広告のような展開を見せた。「面白い広告が新聞を元気にする」と日経新聞社さんがすごく喜んでくれ、アンサー広告を出そうという運びになった。「こら!金鳥(小さく様と入っている)」「誰が一方通行やねん!」という打ち出しで、同社のデジタル施作を紹介。日経のチャレンジ精神×金鳥のオモシロ精神でアンサー広告まで作れた。

【ラジオCM】ラジオCMでは「G作家の小部屋シリーズ」で2019年ACCグランプリ、2020年TCCグランプリをいただいた。試行錯誤した経緯は2020年のTCC年鑑を見ていただきたい。「虫コナーズで名言を」(2021年の ACCグランプリ)は60秒のうち40秒はただ心地の良いリズムの音楽が流れているだけ。リモート/デジタルで効率ばかり求められる中で、ムダな時間を愛おしく思って発想した。

■「大阪のクリエイティブを元気に」どうやって!?

 関西の強みは何なのかと考えた時に、関西には本音の文化がある。「本音・正直・疑い深い・すぐ勝手にルールを変える」などという関西人気質は、広告を発想する上ではものすごく強みになると思う。正しいけどそれ本当に届いてるか? そのデータほんまか? と真の課題を見つけ悩み続けるチカラがあれば、関西のクリエイティブはもっと元気になっていくと思う。「本音」を「正直」に置き換えると全国で通用する。正直は強い。今とくにそう思う。あとサービス精神。目の前のやつを笑わしたい、びっくりさせたい、楽しませたい。関西の広告力はここに尽きるかもしれない。リモート化で失われる人との関係性は深刻だなと思う。

 広告もどんどん複雑化しムツカシクなってきたが、まっすぐに正しく考え進めた誰も文句の言えない広告も、届かなければ意味がない。アドバタイジングとは方向を変えること、つまりはまず振り向かせること。どうやって考えたん? どうやって思いついたん? と言う「軌道の見えないパンチ」の方が強烈に効いたりする。行き詰まっていた若い頃、僕をラクにしてくれた堀井博次さんの言葉がある。

「まったく新しいことでなくても、ちょっとだけ珍しかったらええねんで」。

 この言葉を今でも心に留めながら、がんばりたいと思う。

(この内容は古川氏の講演を元にOAAAが編集したものです)

 

第2部:電通関西支社 プランナー/コピーライター

講師:小堀 友樹氏

 

 

DIY的広告制作のススメ

代理店のクリエイティブは企画だけと考えがちだが、やりたいことは自分でやってしまう。これを「DIY的広告制作」と呼んでいる。今日は4つの事例を紹介しつつDIY的広告制作のススメについて話そうと思う。DIY的仕事の長所は、制作費が安く済む、自分でやるので変更/改善しやすい、上がりが良くなる(気がする)。短所は手間や時間がかかって大変だということだ。

先日「言語能力は道具を使った作業をすると向上する」という論文が「サイエンス」に発表されていた。絵もストーリーも作れる漫画家はすごいなと思っていたが、きっと同じ理論だろう。僕たちもずっと机に向かっているだけではなく、DIY的に手を動かすと企画にもプラスになるのではないかと思っている。

  1. 動画:アイフル「そこに愛はあるんかるた」

「そこに愛はあるんか」と言いたくなる46種類のシーンをWEB動画でかるたにした。めちゃくちゃな量を作ったのだが、社内スタッフの各得意分野を生かして内製した。15秒1本だといろいろ意見も出るが、これだけ作れば「もうええかな」と任せてもらえた。すべてバラせる短いネタなので、SNSやユーザーの趣味に合わせて振り分けられるというのが利点だ。また中身を全員に理解されなくても一部に反応してもらえればいいと考えた。例えばゲーム好きな人が反応するようなネタも入れてみたが、結果は良い感触だった。

  1. ゲーム:宇治市スマホ向けアクションゲーム

国内ゲーム市場は年々拡大しており、コロナ禍で売上は過去最高。特にスマホのオンラインプラットフォームが伸びていて、2015年には映画と音楽の市場規模を抜いた。いま少人数・低予算で作る「インディーズゲーム」が一般化していて、世界中で楽しまれている。今年のカンヌリポートにも「ゲームが広告を進化させる」という記事があった。

しかし代理店は、映像は作れてもゲームのノウハウがほとんどない。宇治市のスマホ向けアクションゲームでは、既存のゲームに乗っからず1から社内でゲームアプリを作り上げた。実在の観光名所や人物がキャラクターになっていて、最初は無料で遊べるが途中からは現地に行かなければ続けられない仕掛けを用意。不親切なUI(User Interface)がユーザーを苦しめるという楽しませ方も考えた。僕自身が宇治市出身なので、身内もキャラクター化して登場している。ゲーム自体の開発はゲーム開発会社が行ったが、その他のシナリオやルールなどは社内の人間で内製した。

いろんな媒体で取り上げていただき、ダウンロード数はおよそ27,000。無名のゲームとしては成功したと思う。ふるさと納税を活用したクラウドファンディングでは600万円を調達し、制作費も結構回収できた。返礼品にはオリジナルキャラクターとしての登場や、エンドロールにネームを入れる権利などを設定した。ゲームをクリアした人は1700人(在住者も含む)。その後も市役所でRTA(Real Time Attack)大会が行われるなど長く楽しんでいただけた。打ち上げ花火で終わらずに実際に人を動かすことができる観光PR施策となった。

ゲームレビューサイトでは「ゲームとしては0点だが、広告としては100点」と評価された。観光情報を知ってもらう・実際に訪れてもらうしくみがあれば、ゲームとして成立していなくてもいいと思う。動画だと3分を超えると厳しいが、ゲームだと見てもらえるし、ゲームを起点にいろんなところに拡散を狙える。デメリットは開発元の選定や制作進行などに専門知識が必要になってくること。ゲーム業界との文化の違いも感じた。しかし広告主が作ったインディーズゲームが配信されれば、普通に楽しめるので今のニーズにもマッチしていると思う。

  1. WEB:Panasonicエチケットカッター開発秘話

若年層の鼻毛ケアへの関心を高めるため、スマホを使った施策を実施。ウェブサイト上のインタビュー記事で製品開発者が製品の魅力を語るのだが、スクロールすると開発者の鼻毛が次々と伸びてくる。すぐ公開停止になったがサイトアクセスはなんと29万回。接触者の5人に1人が商品を購入した。

僕はライターとしても活動しているので、自分でインタビューをして記事を書いた。「オモコロ」や「デイリーポータルZ」などの記事サイトは、ユーザーが視聴時間を自由に選べるので今の時代に合っている。でも代理店は、WEB記事制作能力は低め。自分たちでやれば、WEB記事でも広告メッセージにしていける。おもしろWEBメディアの中は意外と競合が少ないので狙い目だと思う。

  1. 雑貨:DIY的?雑貨開発

雑貨開発もやっていて、商品企画、デザイン監修、PRなどを社内で行っている。プロダクト開発チーム「専業ムフ」として細々と活動していたら、ある時ガチャガチャメーカーの「ブライトリンク」さんに見つけてもらい、一緒に商品開発をすることに。第一弾として「ギャルが折った折り鶴」を3月にガチャで販売する。ヴィレッジ・ヴァンガードさんとコラボした商品には「黒マスクいつの間に」「伝説のフェイスシールド」「うつさざるキャラグッズ」などがある。コロナで店頭に人が来なくなったが、話題を提供して盛り上げていこうという狙いだ。代理店がやれることは既存の広告だけではない。こんな時でもヴィレッジ・ヴァンガードって楽しいよね、と思ってもらえることが広告だと思っている。

これまでの考え方だと制作部分は外注することが当たり前だった。しかし本来作ることは「考える+手を動かす」の両輪。冒頭で紹介した理論のように手を動かすことで企画が良くなることもあるのではないか。そして自分で手を動かすからできたものに愛着が湧き、熱量のあるものが作れるので結果もついてくるんだと思う。

  (この内容は小堀氏の講演を元にOAAAが編集したものです)

 

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