第23回 夏期広告セミナー

第23回となるOAAA夏期広告セミナーは、2019年7月23日(火)に大阪大学中之島センター10階佐治敬三メモリアルホールで、会員社・媒体社・大学生等約75名が参加して開催された。講師は、『キャッチコピーの教科書』や『今すぐ自分を売り出す1行をつくれ』の著者・さわらぎ寛子氏。一般の人や個人事業主向きに、課題の見つけ方、価値の発見、問題解決の発想法、その言語化というオリジナルなメソッドで事業サポート・セミナーを行う異色のコピーライターである同氏に、日々、どのようなプロセスで臨めば、クライアントに信頼され、クライアント価値を最大化させられるのか、模擬トレーニングを交えながら実践的なノウハウを語ってもらった。

 

「君にやってもらいたい」と言われる仕事の作り方

講師:コピーライター/コトバワークス株式会社代表取締役 さわらぎ寛子氏

私がゼロから自分で仕事を作り出すまで

私は21歳からコピーライターを始め、最初は大手広告代理店に出向という形で働いていた。周りは優秀な人ばかりで自分は落ちこぼれだった。その後制作会社を経てフリーに。結婚・出産も経験し、全くゼロの状態から自分で仕事を作ってきた。フリーになった当時はちょうどブログやホームページが普及し始めた頃で、出産育児ライターという肩書で発信を始めた。長男の子育てが辛かった時期なので、その辛さをポエムにして書いていたところ、ある企業の目に留まって初めて仕事を得た。

それから育児書のゴーストライターや雑誌の仕事をするようになるが、出産の翌日まで病院のベッドで原稿を書くような働き方だった。これでは身が持たないと思い、受注ではなく自分で仕事を作り出していこうと決心。自分ができること・ニーズ・ライバルを分析した結果、「個人事業主や一般の人向けにコピーを教える」という仕事に可能性を見出した。折しもブログやSNSなど自分のメディアを使って告知や集客をする人が増加。けれども一般人向けにコピーを教える人はまだおらず、そのポジションが空いていた。ブログでノウハウを発信していたら出版の話が舞い込み、「コピーライティングの教科書」という本になった。

コピーの本を出すような人は大手代理店に勤めていて、プロフィールの半分に受賞歴が並ぶような人がほとんど。受賞歴もない自分がこんな本を出しても大丈夫なのかなと心配だったが、そんなことは全く関係なく本も順調に売れている。結局大事なのは今、目の前にいるお客さんにどんな価値を与えられるかということなのだ。

言葉にできないことを言語化するスキル

1人の人が受け取る流通消費量は変わらないのに、SNSやスマホの普及によりここ10年ぐらいで流通情報量は爆発的に拡大。情報はどんどんスルーされている。また昔は買ってもらうことがゴールだったが、現在は買った後の方が長い。購入後に感想や口コミがネット上で拡散されて生活者に影響を与えるからだ。だからどう買ってもらうかではなく、商品やブランドの信頼度を高めてファンを増やし「あなたから買いたい」「あなたが言うなら欲しい」と思われる企業やブランドになっていくことが大切になっている。

企業研修や広報の顧問などをやっていて最近強く感じるのは、自分が何を欲しているかをうまく言えない人が多いということ。だからうまく言葉にできないことを言葉にすると信頼される。相手が求めていることを掴み取って言葉にするコピーライターの仕事は、広告に留まらずニーズが広がっていくと思う。広告もビジネスも問題を解決するものだと言われてきたが、これからは本人が気づいていない問題を見つけて言語化できる人が求められる。

では言葉にできない思いをどう言葉にしていくのか?「キャッチコピーの教科書」では、自分がコピーを書く時にやっているステップを誰もが理解できるよう、分解してわかりやすくまとめた。自分が身につけてきたノウハウを誰もが使えるマニュアルにしていくことも、仕事の作り方のひとつだと思う。

ターゲットを明確にし、言いたいことを変換

5つのステップのうちまず大切なのが「誰に伝えるか」だ。私はコピーを書く時にみんなに伝えようとするのではなく、特定の人(実在の人物)を思い描いて書いている。ターゲットの分析にいつも用いているのがA→Bのワークシートである。人が知りたいのは自分にとってどういいか、自分がどうなるのかという変化だ。だからAにはターゲットの悩み(不安、不満、不便)を書き出し、Bにはこうなりたいという理想や願望を書く。単語ではなく文章にし、どんな悩みを感じている人向けの商品なのか共感のポイントを探る。Bにはこの商品を使ったらこうなるではなく、その人達がどうなりたいと思っているのかを具体的に書く。そしてAとBを一文でつなげると、その商品/サービスを簡単に説明できるようになる。

自分が言いたいことをそのまま言うのではなく、相手が知りたいことに変換してあげることも大切だ。「こんなところがすごい、ここが売り」ではなく、ターゲットが言ってほしいと思うことを言ってあげる。まずその商品やサービスが相手のためにできることを書く。次に相手にとってのメリットを書き出す(企業や商品が約束できること)。

そしてメリットを得て、その人の生活や未来がどう変わるかというベネフィットを書き出す。ベネフィットには人が同じ絵を思い浮かべられることを具体的に書いていく。例えばダイエット食品なら「食事制限で無理なく痩せられる」よりも「ノースリーブが似合うようになる」の方がイメージしやすい。伝わるということは相手と同じ絵が浮かぶこと。「かわいい女の子」という表現では人によってイメージする“女の子像“が違う。これでは伝わったことにはならない。

自分の価値を言葉にできる人が選ばれる時代

今どんな業界や業種の人でも自分の名前で仕事を取れることがすごく大事になっていると思う。私の周囲を見回しても自分がしたいことをカタチにできている人は少なく、本来自分が持つ価値を活かせていない人が多いように思う。誰に、どんな価値を提供できるかを、自分の言葉で発信していくことができれば、どんな状況でもゼロから仕事を作り出せる時代だ。だから2冊目の著書「今すぐ自分を売り出す1行を作れ」は商品やサービスの売り方ではなく、自分自身が売れる人になろうというのがテーマ。選ばれる人になるためにしっかりと自分の価値を伝えようという内容だ。1行で伝えられると自分で仕事を作り出せるし、この人にお願いしたいと思われるようになる。仕事においても商品やサービスの価値を1行で伝えることをやっていると、それが企画にもなりキャッチコピーにもなっていく。ぜひ参考にしていただきたい。

 

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