第2回マーケティングセミナー

昨年に引き続き、日本インタラクティブ広告協会との共催による第2回マーケティングセミナーを、2020年1月24日(金)に大阪大学中之島センター10階 佐治敬三メモリアルホールにて実施。本年も満席140名の参加があった。アドフラウドに代表されるネット広告の不正は、ますます問題視され、アドベリフィケーション対策は待ったなしの状況となっている中、日本アドバタイザーズ協会が出した「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」に沿う形で、どのような点に、どのように気をつけていけばよいのかを、具体的に説明してもらう有意義な勉強会となった。

続・ネット広告のダークサイドと、どう闘うか。

〜クライアントに尋ねられたとき、あなたはどう説明できますか〜

講師:一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)

常務理事 植村 祐嗣 氏

当日配布資料はこちら

 

玉石混交のネット広告

 ネット広告(メディアのみ)は1.45兆円の市場があり、2019年はさらに増えるだろう。アナログ時代のさまざまなコミュニケーションがスマートフォンに入ったのがデジタル広告である。マス広告はプレミアムネット広告やPMPに置き換わった。検索連動型広告のようなPull型広告は、昔の電話帳に該当する。手紙・電報・電話・FAXなど、かつての1to1コミュニケーションは広告媒体ではなかったが、現在はツイッターやインスタグラムなどのSNSに広告が入るようになった。

そして店頭・POP・チラシ・DMなどなど過去20年ぐらいのプロモーション費6〜7千億円もデジタル化した。その分類に含まれるいかがわしい広告を掲載した街頭ティッシュ・捨て看、客引きなどもデジタル化へ移行。これらがグレー〜ブラックの販促・広告だ。以前はまともな業界とブラックマーケットは交わることがなかったが、混ざってしまったことがさまざまな問題の根源となっている。

例えばSNSに広告を出して、前後にいかがわしい投稿があるとクライアントからブランド毀損だと言われる。しかしそもそもSNSは個人のコミュニケーションなのだから、これは事前の免責事項で営業の説明責任である。簡単に切り返せないからややこしくなるのだ。逆に若い世代は前述のような媒体の歴史を理解する必要がある。

従来は「広告目的による棲み分け」が成り立っていたが、ネット上では誰もがメディアになれるので玉石混交のカオス状態を生み出す結果になった。つまりネット広告がダークなのではなく、自由であるがために実社会に存在するダークサイドの侵略を許してしまったのだ。本質的な対策は「市場分断」しかない。

国は民間での自主規制を促しており、JIAAがその任務を担っている。漫画村の問題でも我々は自主規制を強めた。国と民間団体で役割分担してダークサイドへの広告費流出を絶つ。これをやりながらネット広告の市場を分断してきれいにしていくことが大切だ。

 

街頭チラシ配布に例える

いろいろな問題を街頭チラシに例えるとわかりやすい。

Viewability:チラシを視認可能な状態で配布しているか。もし見えていなければ何%が視認可能ではないのか、それは相場に反映されているか。

Ad Experience:広告の掲載形式・フォーマットのこと。誤クリック率を高める目障りなフォーマットが多用されれば、ユーザーにはマイナス感情が伴い逆効果になる。

Brand Safety:マス広告では掲載媒体を選んでいたのに、ネットでは媒体を選んでいないという単純な問題が原因だ。どんな媒体にどんな出方をするのか、営業はもっとセンシティブにならなければいけない。

Ad Fraud:広告詐欺をやるような反社会勢力へのお金の流れを止めなければいけない。フラウド排除する努力を続けながらも、SLA(Service Level Agreement)で予めリスクや免責事項を説明し、クライアントと合意をしておくことが必要だ。

 

キーワードは信頼性

  JIAAが行った「2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査」の結果、ネット広告は好感度、役立ち度、楽しさ、必要性はマスを上回っているものの、信頼性は低いことが明らかになった。さらにユーザーは、フォーマットや繰り返し表示される広告に対して嫌悪感を抱いており、それがネット広告へのネガティブイメージに繋がっている。この状態を放置しておけばアドブロックが普及してしまう。

またユーザーの8割以上は無自覚のうちに取られる情報に対して不安を感じている。一方で広告があることで、検索サービスなどを無料もしくは安価で利用できるメリットに共感する広告受容者は90.6%いる。この数字を維持するためにもアド協・業協・JIAAが協力し合ってシステムの健全性を図っていかなければならない。

 

デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言

2019年11月に「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」が発表された。それらを次のように分類してみた。

 

品質課題

1.アドフラウドへの断固たる対応:フラウドの標的は主にDSP/SSP(媒体指定ではない運用型)による取引だ。フラウド含有率はこの領域において未対策の場合の世界平均が10%前後で、対策済みの場合は1%台という調査結果もある。対策を取ればほとんどは安心・安全だということ。

2.厳格なブランドセーフティの担保:広告掲載不適切コンテンツカテゴリは、ブランド毀損+反社会勢力の資金源となるので絶対に許さない。ブラックリストはブランド毎に異なるので、リスク判断を丁寧に事前確認すること。

8.ユーザーエクスペリエンスの向上:CBA(Coalition for Better Ads)は、ユーザーが嫌うオンライン広告12パターンの規制を始めた。日本は独自のフォーマット数パターンについて追加の非推奨を行う予定。広告の掲載フォーマットも事前指定と確認が大切だ。

★. アドバタイザーが持つべき倫理観:違法・不当な表示・表現、虚偽広告、ステルスマーケティング、不快なフォーマットといった手法を絶対に受注・提案しない。

 

取引回り

3.高いビューアビリティの確保:想定ビューアブル率が計測されているか相場に反映されているか等を、個別取引の際に事前に確認し合って欲しい。ビューアブル率の高さだけでなく、滞在時間、前後の記事内容、相場も含めた総合判断から見極めていただきたい。

5.サプライチェーンの透明化:アドテクによって技術やデータ収集・利用などにコストがかかるようになった。サプライチェーンを通して、広告費のうちメディアに届く割合が減ったのは、必ずしもメディアが買い叩かれたのではなく、「人」の選択買いをするためにコストがかかった結果である。

7.データの透明性の向上: ID等で個人を特定する情報の扱いにはより慎重な対応が求められる。

 

第三者測定

4.第三者によるメディアの検証と測定の推奨・6.ウォールドガーデン(GAFA等のこと)への対応:ウォールドガーデンとは閉ざされた庭=クローズドプラットフォームを指す。GAFA等は門戸を開いて第三者測定を受け入れよという話。但しアプリは第三者測定は難しい。

 

まとめ

アドバタイザー宣言は、何が主眼なのかで分けると理解しやすい。ネット広告の複雑さのせいで実相がわかりにくく、単純な誤解を招きがちなテーマも多い。課題や論点の本質を踏まえ、よりよい広告活動を目指して広告主・サプライサイドと丁寧に価値共有していくことが大切だ。

 

 

 

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