第17回「OAAA交通・屋外広告セミナー」

第17回 OAAA交通・屋外広告セミナー

「グローバルのOOHトレンドとプログラマティックOOHへの取り組み」

 

講師:株式会社 LIVE BOARD 代表取締役社長 櫻井 順氏

1.グローバルのOOHトレンド

電通の調査によると、2023年世界の広告費は、インフレ率・金利の上昇による個人および企業消費への影響などを鑑みて低成長が予測されている。広告市場全体で3.8%、市場規模はおよそ100兆円。コロナで最もダメージを受けたOOHは2.0%の成長に留まっている。日本は長年アメリカ、中国に続き世界3位の広告市場をキープしており、OOHも世界3位の市場である。

しかし低成長の中でもグローバルでデジタルOOH市場は、19.2%の成長が見込まれている(103億ドル:約1兆3650億円)。その主な要因として、指標やデータの整備、欧米などの成熟市場におけるプログラマティック化の進展、新興市場国の成長市場におけるデジタル化の進展などが挙げられる。デジタルOOHのプログラマティック比率は20%に及ぶというリポートもあるほどだ。

ただデジタルOOHだけが価値があるという論調ではない。米ソロモンパートナーズが最近発表したデータによると、OO Hの広告想起率は、テレビ、ラジオ、ポスターなどのプリント、デジタル広告などの中で最も高い広告想起率を示している。他方でここ10年、広告市場全体を牽引してきたデジタル広告の成長が鈍化。広告市場を長年寡占してきたG A F Aの中でも特にGoogle、METAが大きくシェアダウンした。グローバルなプラットフォーム企業が低迷する一方、OOHのようなリアル世界の価値が見直されている。

またメジャメント(指標)の整備により、他メディアとの比較も容易になった。メディア側と生活者が一体となる1対1のデジタル広告と、1対不特定多数のOOH広告とで、インプレッション計測、広告を見ている人の計測の仕方が異なる。国際基準のOOHの計測に従うと、パソコンのインプレッション計測は、同じOOHの計測で見ると実際に出している分の9/100しかないという報告もあるほどだ。2023年は日本においてもOOHにおけるメジャメントの業界指標の標準化を目指して動く1年となるだろう。

世界最大の広告会社「WPP」のOOHグループKineticは「OOHは2023年、広告主に勇気を与える最もパーフェクトなプラットフォームである」とし、その要因を以下のように示した。

①Real- world reach:テレビ広告のインフレーションは獲得できるリーチを下げるが、多くのリーチを獲得できるOOHは自然に選ばれるだろう。

②Context at scale:51%のマーケティング担当者がパーソナル・ターゲティングは最優先課題と答えているが、OOHはそれを洗練されたターゲティングで効率的にリーチできる。OOHは1に公共性、2に広告と最もインクルーシブなメディアだ。

③A matter of trust:デジタル上にはフェイクニュースなどの信頼できない情報が溢れているが、OOHは公共性や信頼性を有する。OOHには編集がなく、公共的な宣言やブランドに透明性のあるメッセージや安心感を与える。ソーシャルメディア企業のキャンペーンも自社で信頼を獲得しようとするが、最後はOOHを選ぶ。

世界最大のOOH企業「JCDecaux」が発表した2023年のトレンドにおいても、プログラマティックOOHへの期待が伺える。例えば2022年の英国では230の広告主がプログラマティックOOHを実施し、プログラマティックOOHの広告費は倍に拡大した。2023年はOOHの効果測定が最も適した指標に統合され、若いデジタル広告主のニーズに応える多くのイノベーションが起き、視的観点も含めて新たな最適化のフェーズに入っていくとしている。またプログラマティックOOHの浸透は、テレビやデジタルなど他メディアとの統合を加速させると同時に、クリエイティブもデジタル・マインドなものにリセットされる。ダイナミック・クリエイティブ・オプティミゼーション(DCO)も大きく伸びると予想している。

 

⒉ プログラマティックOOHへの取り組み

デジタルの割合は年々拡大しており、2022年電通におけるOOHのデジタル比率は40%を超えた。現在当社のメディアネットワークも、屋内外、電車、駅などを含め全国5大都市を中心に約2万スクリーンをカバーしている。デジタルOOHがネットワーク化されたことにより「データ(人の属性・エリア環境など)ベースの配信」「配信枠の一元管理」「メジャメント指標基準」を統合することで、効率的かつ効果的に広告配信を出し分けることが可能になった。

近年の事例を紹介していこう。まず2022年のACCのシルバー賞を受賞したマクドナルドの「ランダムマック」は、動くハンバーガー型QRコードをスマホで読み取って近隣の店舗へ誘導するというものだ。時間や場所、天候などのオケージョンに応じて広告を出し分け、ランチタイム限定の集中放映で購入意向の引き上げと話題感を創出した。事後の調査では半数近くが、購入意向が強くなったと回答した。

動画配信プラットフォームParaviの「パリサンジェルマン独占放送」のプロモーションでは、告知内容に合わせてエリア配信を実施した。KPIに応じて効果検証することで、新規アプリ・DL促進に効果があったことが判明。アプリのDLに寄与するという意味で、OOHの価値を向上させる取り組みとなった。

味の素「鍋キューブ」のプロモーションでは気温18℃以下の時のみ放映し、温かい鍋が食べたくなるモーメントを捉えシズル感のあるクリエイティブで訴求した。子持ち&既婚者へのターゲット配信で、LIVE BOARD接触者の購入意向は大きく上昇。テレビやデジタルなど他メディアと比べて最も高い効果があった。

サッカー日本代表のW杯予選では、試合前後にメッセージ動画に切り替えるプロモーションを実施。JFA公式SNSで募集した応援メッセージを活用し、コロナ禍で声を出す応援ができない中、サポーターからの声援で溢れるスタジアムを表現した。ほぼリアルタイムな広告で、デジタルと同じようなスピードで配信された。昨年末からはスカパーJSATと連携し、全国9都道府県の屋外ビジョンでのライブ配信も可能になった。

このように日本のOOH市場はやり方次第でまだまだ成長の余地が残されている。当社ではデータでその価値を可視化することでOOH業界に貢献し、特にコロナ禍で最も影響を受けたネットワーク型DOOHの再興に注力していきたいと考えている。

以上

(櫻井順氏の講演内容をOAAAにて要約いたしました)

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