第11回人権セミナー

第11回目を迎えるOAAA人権セミナーは、新型コロナ対策として昨年同様オンラインセミナーの形をとって2021年11月30日(火)に開催(参加登録人数34名)。今回は、三年に一度はテーマとして取り上げていくこととなっている同和問題を取り上げた。箕面市北芝で、近隣住民や企業を交えて、積極的にさまざまな活動を展開されているNPO法人・暮らしづくりネットワーク北芝の丸岡朋樹様からご講演いただいた。

 

 

 

「であい・つながり 差別解消を目指す北芝のまちづくり〜誰もが安心して暮らせるまちへ〜」

講師:暮らしづくりネットワーク北芝 ささえあい事務局リーダー  丸岡 朋樹

 

  1. 「暮らしづくりネットワーク北芝」の概要

キーワードは出会い・つながり・元気

大阪府内でも住みやすさランキング上位の箕面市。その中心部に位置する北芝地区には、古くから被差別部落(現在約250世帯・約500人)がある。ちなみにこの地域は、2023年に北大阪急行が延伸して御堂筋線の始発駅になるため、地価が非常に高騰している。私が務める特定非営利活動法人「暮らしづくりネットワーク北芝」は「出会い・つながり・元気」がキーワードで、誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指して地域の人々と協働している。

歴史を振り返ってみよう。1969年に同和対策事業特別措置法が施行されると、地域に団地や公園などが作られ、ハード面での整備が進められた。80年代にはそれまでの行政要求型から、周辺参加型・地域発信型のまちづくりへ転換。同和対策事業の期限が迫る90年代に入ると、行政に依存せず自分たちの資金と体で活動を行うというスタイルに。例えば高齢世帯への配食サービス、地域での仕事創出のほか、和太鼓を通して地元青年の自尊感情や自己肯定感を高める活動も始めた。そして2001年、こうした活動を継続して応援していく中間支援団体として法人化された。

 

地域住民の「つぶやき」を拾う

私達の活動の原点は「つぶやき拾い」です。日常の何気ないふれあいの中から困っていること・ニーズを拾い上げ、課題解決につながる事業や活動を行っていく。まず地域の拠点づくりとして「芝樂広場」を作った。映画会や音楽会などさまざまなイベントを通じ、地区内外の出会いやつながりを創り出している。「食」をテーマにした事業も展開しており、お惣菜とお弁当の店「510deli」、子どもたちの居場所となる駄菓子屋「樂駄屋」(週末は大人向けの居酒屋に変わる)のほか、かつてはカフェも運営していた。社会にいいお買い物を大切にするセレクトショップ「B-MART」、「芝樂広場」での朝市なども開催している。

また当法人が指定管理・運営する施設に、箕面市立萱野中央人権文化センター「らいとぴあ21」がある。いわゆる隣保館と言われる所で、差別の解消・人権意識の向上を目指しさまざまなサポートや啓発事業を行っている。

 

  1. 現在の取り組み

若者の居住支援・・・18歳以上の若者の居住支援として、地域内の古民家を活用。既存の制度からこぼれた差別や貧困に苦しむ若者に住まいを提供し、地域の人と関わりながら自立をサポート。それがやがて支援する/されるという垣根を超えた担い手を育てていくと考えている。

 

企業との連携事例「commpost」・・・若者の就労体験を生み出す・創り出すことも積極的に行っている。例えばアパレル会社の「アーバンリサーチ」さんとコラボし、廃棄衣料を再利用したプロダクトブランド「commpost」の製作をしている。これは箕面市のふるさと納税返礼品にもなっている。

 

コーヒー焙煎・・・引きこもりなど生きづらさを抱える若者の就労支援としてコーヒー焙煎を行っている。焙煎作業は分業できるので、得意なことで参加しやすい。商品化する構想もあり、協業いただける企業さんがあればぜひお声掛けいただきたい。

 

なんでもやったるDAY・・・月1回の「なんでもやったるDAY」は、地域のために何かやりたいという若者が地域の困りごとを解決するというものだ。これがいろんな問題を抱える若者の社会参加を促した。2018年に法人化し、活動の場を広げている。学齢期のセーフティーネットから抜け落ちる子どもたちの受け皿になるという役割もある。困窮する若者×地域のニーズという方程式で、若者の小さな社会参加を地域の課題解決につなげていこうという考え方だ。

 

  1. 北芝版地域ささえあいプラン

2015年に住民の聞き取り調査を行った結果、次のようなことが見えてきた。4人に1人は75歳以上の高齢者で、うち1/3が高齢者だけで生活している(独居を含む)。子育て世代の半分がシングルマザーである。そこから見えてきた課題が、食事・つながり・居場所だった。また地域活動に参加したいという声も聞かれた。高齢化で医療や介護のニーズもますます高まっていくので、今後10年を見越した「ささえあいプラン」を策定。それぞれの困りごと、得意なことをマッチングさせることで課題解決を図る。こうして地域で助け合い、見守り合う風土を作っていこうという計画だ。

 

団地集会所の活用・・・ささえあいアクションの一つが団地集会所の活用だ。活用会議を行ってアイデアを出し合っており、そこからビュッフェ式子どもの朝ごはんの会「HDK(Hotel De Kitashiba)」、保健師を招いての健康相談「おちゃっこサロン」、フリーマーケットなどが生まれた。

 

地域通貨「まーぶ」・・・主に子どもや若者を支える目的で、地域通貨「まーぶ」(まなぶ+あそぶの造語)が誕生。被差別部落ということで未だ貧困が連鎖する状況下にある子どもたちや様々な課題を抱えている子どもたちが、家庭の状況に左右されず社会体験を可能にする、そのツールとして地域通貨を導入した。例えば夏休みや春休みなどは午前中事業に参加してまーぶを稼ぎ、午後は子ども食堂で健康的なごはんを食べてもらう。まーぶの流通で集まった募金などで子どもの夢を叶える「まーぶ夢コンテスト」や、貯めたまーぶで海外へ行くスタディツアーなども行っている。

 

他にも地域共済の試行実施をはじめ、2018年の大阪府北部地震以降は地域防災にも積極的に取り組んでいる。

 

  1. ささえあいプラン実現に向けた「人」とつながる地域づくり

住民のニーズを拾い上げ、何ができるかを模索する。その中で支援される側から支援する側へ担い手を発掘。中間支援で人々をつなぎ、地域の人と共に課題を解決していく。社会的に孤立した人や、失業・貧困にあえぐ人々が少しでも生きやすくなれば、誰もが安心できるまちにつながっていくのではないかと思う。被差別部落というとマイナスイメージを与えがちで、知らないことが危ない・怖いという偏見を助長する。しかし私達は圧倒的プラスの出会いを創出することでこの問題を解決していけると信じている。

 

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