第9回 人権セミナー

第9回目を迎えるOAAA人権セミナーは、2019年12月11日(水)に大広12階会議室で50数名の会員のもと開催。今回のテーマは、昨今よく言われるようになった「男らしく」「女らしく」という社会が勝手に決めたステレオタイプ的な性・ジェンダーについて。広告表現上でも近年問題作に対してSNS等での炎上が頻発。どのような点に留意が必要であるのかを、長年にわたって調査・研究されてこられた三輪敦子様に具体的な表現事例をもとにご講演いただいた。

「広告から偏見を排除する〜性別に関するステレオタイプって?」

講師:アジア・太平洋人権情報センター所長 三輪敦子氏

 

広告における女性

広告において女性がどう扱われてきたか、そこには2つの課題がある。ひとつは女性のモノ化。女性は性的対象として、見られる存在、他から評価される存在として扱われてきた。美しさに関する単一的な尺度の問題も含んでおり、女性の若さ、体型、身体的特徴を礼賛する。それは性的メッセージと一体化し、性的描写や性的表現を交えた広告や表現が規制なく氾濫しているのも日本の特徴だ。

2つ目は性別役割分担に関する固定観念の強化だ。「男が外で働き、女が家で家事をする」という性別役割が未だに踏襲・強調されている広告が多い。現実は既に変わっていることも多いのに、これまで一般的と考えられていた慣習をそのまま持ち込んでいる。こうした扱いが女性への偏見や固定観念の強化に結びつくことが一番の問題だ。そもそも誤った意識や偏見にまみれているという問題もあり、そうした考えに基づいた広告も多く存在している。

 

女性のモノ化・見る対象・性的対象としての女性

まず女性の表現について批判が殺到した広告事例を見てみよう。<事例紹介> 映像にせよアニメーションにせよ、いずれも巨乳や体の線などが強調され過ぎている。つまり女性が見る対象であり性的対象として描かれており、女性のセクシュアリティのモノ化が窺える。こうした広告が地方自治体や公共性の高い組織/団体で作られていることも驚きだ。

 

性別役割分担に関わる固定観念の強化

ある企業による、「働く女性を応援する」意図でつくられたCMにも批判が殺到した。表現のベースに、職場で働く女性に対する固定的な見方や偏見があったからだ。女性が「職場の花」として扱われていた時代は過去のものになっているはず。同様に「男性=力強い」「男性の仕事が世界をつくっている」という広告表現も見受けられ、こうしたステレオタイプな見方や、「男はこうあるべき」「女はこうでなくては」という性に基づいた意識を強調するような広告が固定観念を強化している。

 

誤った意識・偏見

例えば「暗い夜道を1人で歩くと女性が性犯罪の被害に遭う」というのはレイプ神話の反映であり、現実とは大きく異なる。こうした誤った意識や偏見に基づく広告も多々見られる。痴漢を始めとする性犯罪について、加害者を問わず、「被害者が十分に気をつけるべき(そうすれば防げる)」というメッセージもあふれている。同じ職種でも求人広告では男女で全く異なるアプローチがなされている場合もあって、職場における性別役割分担や強固なジェンダー意識を強く感じさせる。本当の意味での女性活躍ではないことは明らかだ。

一方で変化も起きている。批判を受けて、偏った見方を与えない広告表現に改めた会社や組織もある。ユニリーバは、ダヴという商品のCMで、ジェンダーに基づくステレオタイプを脱皮するための独自のキャンペーンを展開している。

 

固定観念はなぜ問題か?

 固定観念を学術的な観点から捉えたのが、有名な「ヘイト暴力のピラミッド」だ。最下層にある固定観念や先入観が暴力行為にまで発展する過程が示されている。ミャンマーにおけるロヒンギャの人たちへの迫害もこれに相当する部分がある。フェイスブックによって偏見や差別が拡散され、暴力や殺人に発展。世界最大数の難民を生み出した。偏見やステレオタイプが、深刻かつ過激な暴力を伴うヘイト行為につながる可能性があることを認識していただきたい。逆に悪しき偏見やステレオタイプをばらまかないこと、是正することで、社会が良くなっていく可能性もある。

(出典:Brian Levin, Anti-Defamation League)

 

男女のステレオタイプを描く広告を規制

 イギリスの広告業界では男女のステレオタイプを規制する動きが始まっている。「深刻もしくは広範な被害につながる可能性のある性別に基づく有害なステレオタイプ」を扱う広告を禁止した。例えば男性が寛いでいる間に女性が掃除をしているといったシナリオはもう使えない。ステレオタイプな広告表現が「人の可能性を狭める」一端を担いかねないからだ。

最後に申し上げたいのはフェアな広告を作って欲しいということ。社会は多様な人々で構成されている。人口の半分を占める女性への配慮はその第一歩である。そのためには有害な固定観念や偏見を助長しない、そして是正することが大切で、そのためには社会の変化に敏感になる必要もある。また悪意はないけれど偏見を助長するような表現「マイクロアグレッション」にも気をつけていただきたい。そして、どこに生まれたどんな人でも幸せになる広告を作って欲しい。それは結果的にクライアントをもハッピーにすると信じている。

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