第1回マーケティングセミナー

今年はじめての開催となった「マーケティングセミナー」は、2018年9月13日(木)に大阪大学中之島センター10階佐治敬三メモリアルホールで開催。奇しくも9月初旬にNHKのクローズアップ現代で「ネット広告の闇」が取り上げられ、同テーマへの関心が高まったためか、定員140名が埋まる盛会となった。日本インタラクティブ広告協会の常務理事・植村祐嗣氏から、まさにこのネット広告の現状と問題点の整理、今後の対応ガイドラインについて詳細にうかがう貴重な機会を得ることができた。

ネット広告のダークサイドと、どう闘うか。

〜クライアントに尋ねられたとき、あなたはどう説明できますか〜

講師:一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)

常務理事 植村 祐嗣 氏

 

ダークサイドの原点

 ネット広告の闇が広告業界を震撼させている。日本では今年NHKで違法な海賊版サイト「漫画村」が取り上げられ、ネット広告の仕組みを悪用して収益を上げる裏広告の実態が浮かび上がった。漫画村の資金源は広告、利用者のユーザーデータ販売(犯罪者に流れる)、仮想通貨のデータマイニングだ。コンバージョン率が高いため引き合いも多かったようで、知らないうちに違法サイトにまともな企業の広告が流れ、不法勢力に資金を提供する結果となった。

日本のネット広告費はおよそ1.2兆円。これはマス媒体からの移行ではなく、プロモーションメディアいわゆるSPの広告費が激減し、折込・DM・フリーペーパー・電話帳などのメディアがデジタル化したためだ。これが約半分。あとは捨て看・客引き・押し売りなど、もともと統計に入っていない販促がGoogleやGDNなどを使うようになると、ネット広告費に入ってくる。つまり1.2兆円には合法違法が区別なく含まれており、グレー〜ブラックな広告・販促がデジタルに移行しただけでアナログ時代と本質的には同じ。これが根本的な問題と言える。

 ブラッククライアントが4マスっぽいまともな広告に入ってきたり、ナショナルブランドの広告がいががわしいサイトに出てしまったりするところに問題の根源がある。従来はAbove the Lineがブランディング重視の広告目的、Below the Lineが効率をより重視する広告目的という風に棲み分けされていた。

マス広告=ブランディング重視、プロモーションメディア・インターネット広告=獲得や効率を重視、と思われがちだが単純には分けられない。インターネット広告も両者が混在し、統計的な仕分けは困難だ。ただマス媒体に出す時は媒体をセレクトするのに、なぜインターネット広告の場合はケアしないのか?Above /Below the LineでKPIは違うはずなのに、インターネット広告では4マス媒体で間違えなかった広告目的とKPIのかけ違いを起こしている。

 この状態を引き起こしているのがカオスマップだ。インターネット広告の場合、クライアントと媒体の間に、多数のアドテクベンダーが存在している。このカオスマップがブラックボックス化し、アドテクベンダーが法律や品質を無視して効率だけを最優先してやってきた。特に掲載枠からターゲティングへ、ターゲティングができれば、その中にいかがわしい媒体が入っていても構わないという考え方が諸悪の根源となっている。

 本質的な体質改善は次の3つしかない。①ブラック市場の分断②目的とKPIの区別③「目的不明確・KPIの未整理・リスク軽視」を改める。市場分断のために我々も警察と協力しながら対策を講じている。もう知らなかったでは済まされない。支払先・受注元チェックを行い、クライアントにきちんとリスクの説明をすることが重要だ。

品質課題とは

漫画村の問題などを受け、ビューアビリティ(視認可能性)に対する透明性や責任説明が重要な課題となっている。広告を送り出すだけではなく、視認可能な環境にあるかどうか、ビューアブルインプレッションの測定を促す環境整備も進めている。ビューアブル率を高める工夫や改善点なども各媒体社さんにアドバイスしている。

例えばスマホ画面の広告枠を検討する場合、どの位置がいいかは一概に言えない。ビューアブル率、滞在時間(露出)、相場の総合判断で商談を進めていただきたい。現在はビューアブル率の高い/低いだけでブランドリフト効果を単純に判断できない、という考え方が世界的に認識されつつある。

 そして消費者にとって不適切な表現、受け入れがたい広告フォーマット、広告主にとって不適切な広告掲載先は広告審査でしっかりチェックしなければならない。アメリカのGoogle Chromeでは12パターンの迷惑広告を取り締まる対策を始めたが、日本でも順次対策を進めている。これを軽視しているとアドブロックの普及を招いてしまう。

ブランド価値を損なう広告掲載先へ配信されないようにする「ブランドセイフティ」に対する取り組みも行っている。広告主サイドで一番良い対策は、予約型でヤフーやLINEといった特定の媒体を買うことだ。次にPMP/ホワイトリストを利用した配信面の制御、買い付け先(Exchange/SSP)の制御、3PAS配信・Pre-bidソリューションの活用、ブラックリスト利用、という順にリスクが高まる。リスクを軽減するとどうしてもリーチが下がって値段が上がるが、これはもう経営判断になってくる。

アドフラウド(広告詐欺)はボットなどを使って広告表示回数を水増しして荒稼ぎすること。「いたちごっこ」ながらも、新たなフラウドの排除に向けては業界を挙げて尽力している。日本のフラウド率は、3000億円程度といわれているプログラマティック取引市場のうちの9.1%との計測もありアメリカやヨーロッパとほぼ同じ。被害額は約270〜280億円と見込まれる。海賊版のようないかがわしいサイト問題とフラウド問題は違う事象だが、多くの場合は合併症になっている。

 広告主サイドで最も盤石な対策は次の3つ。①掲載先が不明な発注をしないこと②掲載先が明らかでない発注をする場合は、発注先のフラウド対策を充分に確認すること③それでもリスクが心配な場合は、第三者を活用し排除と監視を怠らないこと。※但しブラックリストは陳腐化が早く、万全ではない。

 現在JAA、JAAA、JIAAの各協会が中心となり、広告主や媒体も巻き込みながらデジタル広告の品質課題に取り組んでいる。市場をクリーンにし、より広告価値の高いビジネスを促進していきたい。

 今年ヨーロッパで新たな個人情報保護の枠組み(GDPR)が施行されたが、あまり心配することはない。そもそもアマゾンやクックパッドなどは個人をターゲティングしていない。そのサイト(コンテンツ)を見に来る瞬間が、消費行動を起こしやすいユーザーがタッチポイントに集まっている状況である。だからコンテンツに紐付いてタッチポイントを設計することが最も効果的であろう。つまりデジタルマーケティングの状況はまた先祖返りしていているのだ。

(当日のスライド資料はこちら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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