第32回 クリエイティブ研究会

 

「10億人がつながる Facebook と新しい広告の可能性」

今年のクリエイティブ研究会は、11月20日、TKP大阪梅田ビジネスセンターで開催された。講師にお迎えしたのは元博報堂のCMプランナーで現在はFacebookマーケティングマネージャーの須田伸氏。利用者が10億人を突破したFacebookによるソーシャルメディア・マーケティングについてお話をいただいた。

フェイスブックの特徴

2012年、フェイスブック(以下FB)の月間実質利用者数が10億人を突破した。日本では実名のSNSは馴染まないと言われていたが、この秋に弊社のCOOのシェルリル・サンバーグが来日した際に発表したとおり、日本でも月間アクティブユーザー数が1500万を突破して、今後も拡大が見込まれている。

FBでは実名での情報発信が、情報の拡散を生んでいる。自分が信用している人が「いいね」と言っている情報は、単に企業が発信する情報とは異なる価値を持ち、注目度が上がる。だからFBの実名制とシェアは非常に重要な意味がある。

フェイスブック・マーケティング101

FBマーケティングは、まず自分たちのページを持つことからスタートする。個人と親しい形で企業やブランドがFBページを持つことで、コミュニケーションの幅が広がる。FBページを持ったら、次に既存のマーケティング・チャネルを使って親しい人達にFBページの存在を知らせ、できるだけ多くの「いいね」をもらおう。

企業のファンと継続的にコミュニケーションするためには、ファンの関心を引く投稿をタイムリーに行うことが大切だ。ニューズフィードは定期的に関心を示しているほど出現率が高くなるので、思わず反応したくなるコンテンツの投稿など少なくとも週に1~2回は投稿して欲しい。無料解析ツール「インサイト」を使えば、ファンの反応を分析しながら運用していくことも可能だ。

FBは新しいツールだが、FB上でのユーザーと企業のコミュニケーションは、昔ながらの商店と客の関係に似ている。日頃から店先でちょっとした会話を交わし、合間に商品情報を伝えるようなもの。FBマーケティングでは、話題にしている人(PTAT)の数も重要だ。PTATは直近の7日間にそのページに交流をした人の数で、「いいね」の数と、PTATの両面から着実にファンに情報を広げていくことが大切である。例えば日清食品のひよこちゃんは23万人のファンがいて、PTATが8万人とかなり優秀だ。投稿内容は旅行や週末のイベントなど他愛もないもので、ちょっとしたコミュニケーションや工夫で反応を得ている。

FB上で情報発信する際、次の2点を意識いただきたい。人が関心を向ける価値があるのか?―Why care? 人がシェアする価値があるのか?―Why share? 四季の移り変わりなど、一見ビジネスとは関係ない情報でも定期的に行う=Always Onが大切。日頃のユーザーと会話を絶やさないことで、商品情報が届き易くなり、シェア・拡散に期待できる。

スポンサードストーリーのメカニズム

スポンサードストーリーでは、ユーザーと企業間でコミュニケーションが活発にあると、広告費をプラスしてニューズフィード上で情報の出現率を高くすることができる。従ってスポンサー記事は、ブランドのファンとその友達にニューズフィード上で拡散する確率が高まる。ユーザーが関心を向けているニューズフィード上に出せるというのが特徴で、モバイルではスクリーンの中心にアップされる。実際ユーザーがFBで費やす時間の40%はニューズフィードで、情報を得る確率も、企業のページではなく自分のニューズフィード上が40~150倍と格段に高い。ブランドメッセージの反応率も、ニューズフィード上の方が13.5倍、モバイル画面はPCの広告画面と比較して15.5倍も高い。

ケーススタディの紹介

1.Best Western Hotel
アメリカのホテルチェーンが、ビジネストラベラーとその家族をターゲットにしたキャンペーン。出張で3回使うと、プライベートの宿泊を1泊進呈。FB上で夢の休暇プランを作るアプリ「Dream Vacation」も展開。キャンペーン自体をSNSを意識して組み立てる「Social By Design」によって成功率を高めた。
結果:前年比20%増の売上げ、ホテル会員組織の会員も大幅増加。投稿に対するエンゲージメント率はそれ以前の12倍で、春のキャンペーンとしては最も成功した。

2.ローソン
FB上でフライドチキン「Lチキ」50%オフのクーポンを発行。投稿をそのまま広告に活用できるページポストアドを使ってクーポンの認知度を高めた。ベースには日頃からのAlways Onがある。
結果:飲み物やおにぎりなどの同時購買を促進。ROIは7.3と非常に高く、FB上のファン35万を上回る58万人がクーポンを入手。93%の人がモバイルから入手し、14%の人が実際に利用した。さらに普段の約2倍の「いいね」があり、約100倍のシェア数を記録。キャンペーン前と比べて4%のファンが増加した。

3. Squishable.com
社員6名のアメリカのぬいぐるみオンライン販売会社。まずFBのターゲティング設定で、効果的にファンを拡大。FB上だけのコンテンツ作成や、FBを活用した商品開発など、魅力的なページづくりやファンとの交流を目指し、さまざまな施策を複合的に実施した。

結果:ファンが50万人に拡大。Eコマースサイトの約3割がFB経由、売上の約15%がFB経由と、FBが最も高いROIを示す施策となった。

「FBは広告のプラットフォームではないところが広告主にとっては魅力。FB上ではファンを見込み客として接するのではなく、交流の場として活用すると効果的な結果が得られた」と、FBの真髄を見抜いたSquishable.com社の方の声を最後に紹介させていただく。こうした事例も増えつつあるので、ぜひfacebook.com/marketingjapanでチェックしていだきたい。

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