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第44回 OAAAクリエイティブ研究会

「2024年クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞 受賞者講演」

第44回OAAAクリエイティブ研究会は、2025年10月21日(火)に、大阪大学中之島センターにて、84名の参加者を前にリアルな形で開催した。昨年度に引き続き、当協会と日本広告業協会との共催で、2024年クリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞された宮永氏、メダリストを受賞された松田氏、春山氏のそれぞれの視点から大いに語って頂いた。クリエイターの生の声をリアルな会場に参加して聞くことのできる講演会は大変好評をいただいた。

第1部:2024年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリスト

九州博報堂 クリエイティブ局 クリエイティブ二部コピーライター

春山 豊氏

僕はコピーライター志望だったがプロモーションプラナーに配属され、入社して6年はやりたいことがきない辛い時期だった。それでも夢をあきらめずにがんばって、ようやくコピーライターになることができた。その間仕事をしながら膨大なコピーを書いて賞を取り、実績を積んだ。やりたいことを口に出すのも大切なことで、直談判してCM制作などにも参加した。ようやくコピーライターになってしばらくして九州に転勤。一時は希望を失いかけたが、今では福岡での仕事を楽しんでいる。九州の仕事は圧倒的に予算や出稿量が少なく、人手が足りていないのでほぼ一人で何でもやらなければならない。制約が多い一方尖ったクリエイティブが求められる。社長や現場の方とも距離が近いので話が早く、企画が良ければどんどん進んでいく。僕のクリエイティブは、日々目にする広告への疑問を自分の仕事でぶつけていくというスタイルだ。

<Case1>疑問:なぜ世の中の企業広告は、連呼や歌もので企業名を声高にアピールするのか?

総合機械商社の南陽「ジャンケン」では、そんな手法を使わないインパクト重視の企業広告を目指した。すべて実写で撮ったのだが、予算が少ないので(100万)クライアントの全面協力によって撮影することができた。結果ACCやTCCなどの賞を受賞。地元の情報番組でも取り上げられる(僕も出演)など、低予算ながらPR効果は何倍にもなり、リクルートにも貢献した。

<Case2>疑問:広告に登場する野球選手はなぜ置物のように扱われるのか?

ローソン九州×ソフトバンクホークスのコラボ企画「熱弁」を紹介したい。九州8県にちなむ選手のおすすめを反映したオリジナル弁当を作ることになり、商品開発から参加。パッケージもファンが思わず手に取りたくなるような選手の熱量を感じられるものにした。弁当だけではメディアバリューがないので、球場から一番近い店舗を聖地化。ファンが訪れたくなるような仕掛けを施してチームを後押しした。このように「野球選手と違う使い方をしたい」と考え方を変えることでアウトプットもいろいろ広げていくことができた。

<Case3>疑問:予算があるから車両広告をするのではなく、もっとCMと連動させた仕掛けができないだろうか?

鹿児島のセイカ食品「南国白くま」のキャンペーンでは、夏、アイスが売れる時期に、TV-CMの世界を再現するようなトレインジャックを展開した。電車を避暑地にしようと、地下鉄に鹿児島の川に見立てた床面シートを配置。かき氷アイスが食べたくなるひんやり感を演出した。

「クリエイティブに正解はない」という言葉をよく聞くが、僕はそれには疑問を感じる。3年前にこのクリエイティブ研究会の福岡講演の広告を担当した時、「意外なのに、正解」というキャッチコピーを作った。意外な正解というのがクリエイターの大事なところではないかと思っている。九州の人はクリエイティブが大好きだし、やりたいことを口に出していると助けてくれる人がいる。そういう文化が九州にはある。

最近は生成AIブームで、広告業界にも影響を及ぼしている。AIは瞬時に答えを出してくれてすごいなとは思うが、意外性を感じたことはまだない。意外な正解をこれからも探し続けていきたい。人間は人間に興味があるはずで、だからこそ面白いとか愛らしいとか、人間らしいものを作り続けたいと思う。

 

第2部:2024年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリスト

電通東日本 クリエイティブ・ディレクター/コピーライター

松田 脩氏

電通東日本の仕事は、大手からローカルまで様々。                                                          予算もピンからキリまである。                                                                                                個人的にはCMをつくるのが好きで、ときには自分で演出することも。                                    上司からはよく“逆手にとるのがうまい”と言ってもらえる。                                           企画は「逆手にとれるものを探す作業」に近い気がする。そんな仕事を一部紹介。

<Case1>栗山米菓「瀬戸しお」

「瀬戸しお」は塩味が絶妙な揚げせん。認知は途上だが、一部の熱心なファンに支えられている。オリエンでは“喫食意欲を刺激する”広告というオーダーをいただいた。そこで着眼したのは、コアファンしかいないという状態。ここを逆手にとると、“愛”しかない世界とも言えるのではないかと思った。実際にXで検索してみると、そこは称賛の声で溢れていた。こうしたSNSの愛ある投稿はある種、つよいファクト。これをそのまま紹介することが喫食意欲につながると思った。キャッチは「どうやらうまいらしい」で、食べたことのない人の言葉をコピーにした。さらに愛しかない世界を逆手にとって、「瀬戸しお マズイ」の検索結果はありませんという結果も活用。こうしたアプローチをCMと都内各所OOHで展開した。                                                                    SNSでの反響も大きく、多数ネットニュースに取り上げられるなど話題を集めた。一方で逆手にとられて「瀬戸しお マズイ」が検索に出現するという反省点もあったが(笑)、CMとOOHだけで検索量が80倍に。栗山米菓でも最多LIKE&RPと大成功を収めた。逆手にとる=解釈を変えること。一つひとつの解釈を変えることが発見となり、アイデアが生まれていくように思う。

<Case2>通信カラオケ「DAM」

30周年の記念企業広告。ここではDAMの歴史の厚みを表現したいが、沿革のような広告にはしたくなかった。そこで過去30年のカラオケランキングをとりあげることに。ただ、それも普通に列挙しても面白みがなかったので、掲載予定の日経新聞を逆手にとることに。着目したのは、膨大な量の銘柄が列記されている証券面。楽曲名を銘柄に見立ててランキングをベスト1000まで列記し、アーティスト名や選曲番号、順位を記載し、一見本当の証券面に見えるような擬態広告を制作した。新聞広告だけの展開だったが、Xではかなり反響があり、広告ギミックへの称賛とランキングというコンテンツを楽しむ人からダブル評価で話題が広がっていった。普通を嫌った先に、逆手にとれるものが見つかると実感した。粘り強く考えた結果、証券面という表現を探り当てることで、クリエイティブが大化けした。

<Case3>長倉製作所のリクルート広告

静岡県沼津市にあるB2Bの金属加工会社。事業がニッチ故、学生からはなかなか興味を持ってもらえず、毎年採用に苦労していた。おそらく事業を正攻法で伝えても失敗する。そこで発想を転換。長倉製作所がニッチであることを大前提にしたうえで企画を考えた。例えば“メタルフォーミングのプロフェッショナルエンジニアリングカンパニー”という長過ぎるカタカナの羅列など、難解さも度を超すと笑いになるし、それがターゲットへの共感にもなる。広告で仕事が伝わらなくても、検索したいと思わせる気持ちを作ることは可能だと考えた。茶化すだけではなく、製品や従業員インタビューなどを通して会社についての情報もできるだけわかりやすく伝えた。

結果、新卒応募数は前年比2,5倍、過去最速で内定者も決定した。ネットニュースなどでも取り上げていただき、PR広告換算は約2500万円。X1000フォロワー増に。逆手にとることはデメリットに光を当てることでもある。長倉製作所の場合も欠点だと思われることが逆に魅力になった。欠点は素直に話せたほうが愛される。ある種の開き直りもテクニックだと思う。

<Case4>栗山米菓「ばかうけ」

日常のおやつの定番「ばかうけ」。クライアントからは、SNSファーストな企画でZ世代にコミットしていきたいという意向があった。その期待値を逆手にとってみた。Z世代に寄り添うのではなく、Z世代の前をつっ走る姿をみせたほうがワクワクすると考えた。クリエイティブは、ハリウッドザコシショウが数々の芸をエモーショナルに描いた表現に。「ばかすばらしい人生を。」というメッセージでCMやOOHなどを展開した。結果SNSでは万バズ連発、24番組・300記事で露出し、広告換算は2億円を超えた。逆手にとるコツは、視座を高めること。俯瞰することで突破口が見つかり、突破力が強いほどその効果は拡張すると思う。

今回このような機会で自分の仕事をふりかえる形となったが、思えばこれまで逆手にとるタイプの企画が多かった。逆手にとることは、別解釈すること。別解釈は、書き換える行為でもある。逆手にとることは不利な状況でこそ見つかりやすい。そのタイミングはケースバイケースなので、オリエンや戦略、コピーなど一つひとつのステップで丁寧に洞察することを忘れないようにしている。そうやって逆手にとったものは無視されにくい。それはスルーされることが大前提の広告において大事なことだと思う。

 

第3部:2024年クリエイター・オブ・ザ・イヤー 

博報堂 クリエイティブ局宮永チーム クリエイティブ・ディレクター

宮永 充晃氏

いま、広告会社のクリエイティブはあらゆる場面で求められていると感じている。今回の賞では、「クライアントの中に飛び込み、内部にいるからこそ見えてくる事業課題を、クリエイティブの視点で解決した」という点を評価いただいた。今日はドン・キホーテの仕事を通して、そこに至るまでの経緯や具体的な取り組みについてお話ししたい。                                                 入社3年目、ブランドマーケティングを担当していた頃ある事件が起きた。自分が関わったキャンペーンの広告が実際に使われているか確認しに店舗を訪れたところ、反映されておらず、倉庫の裏で眠っていた。どれほど賞を取った広告でも、現場の人には商品の何がいいかが全く伝わっていないと痛感した。                                                                つまり、アウトプットにコミットするだけでは十分ではないのだ。実際に商品を扱う販売現場の方々にも伝わるよう、プロジェクト自体をクリエイティブディレクションしていく必要があるとこの時強く思った。                                                              この経験から、「本当に手元に届くクリエイティブをつくりたい」と願い、クリエイティブへ異動した後は一定期間、“潜伏期間”と称してこの課題に取り組む仕事だけに専念した。その1年目に転機となる出来事が起こる。あるメーカー様と組んだプロジェクトで、商品開発までこぎつけることができたのだが、役員プレゼンで「何にコストがかかるのか?という部分まで考えて欲しい」と問われた。コストを理解していないと現場の社員もついてこないと思うと教えて貰った。すぐに現場の方々と話をさせてもらった。その時気付かされたのが、広告の仕事は社会に対しては双方向だが、クライアントと社員との関係性は一方通行で終わってしまっているということだった。

1.ブランドをつくる上で大切なこと

この出来事に直面した時に思ったのが、そもそもブランドとは何か?ということ。ロゴやデザイン、ブランドカラーのように、目に見えるものだけではない。ブランドは牛の焼印からきているが、いわば松阪牛のシールのようなもの。本来ブランドは肉の品質はもちろん、育てている環境や餌、酪農家などすべてが関わり合って価値が保たれている。つまりブランドには価値提供の過程すべてが含まれるのだ。だからブランドの三要素は、モノ“らしさ”を価値にした商品、ヒト“らしさ”の源泉、“らしさ”が発揮できる環境であると考える。目に止まりやすいのはモノだが、ヒトがあって初めてモノを作れる/売れるのである。                                                            広告のフェーズで商品・サービスを届けることはとても大事だ。しかしモチベーションを作ることも含めてその手前のフェーズが9割で、ほとんどここで勝負が決まると思っている。ただ広告の役割が小さいというのではなく、クリエイティブが200%能力を発揮するためにも、手前でどれだけクリエイターが入っていけるかが大事になってくる。

2.「情熱価格」リニューアルの背景

ここからはドン・キホーテのプライベートブランド「情熱価格」の具体的事例について話そう。リニューアル以前、僕が担当になった2019年当初「情熱価格」は認知率が低い状況だった。商品の特徴が見えにくく、価値がわかりづらくなっていた。                               そもそもPBがドン・キホーテにとってどんな価値があるのか、ブランドとしての価値をしっかり構築し、プロジェクトに関わる全てのメンバーが自分ゴト化する必要があった。従って表面的なリブランディングではなく、プライベートブランド情熱価格の価値を再定義し、プロジェクトメンバー全員がブランドの価値を自分ゴト化して進めていけるプロジェクトとして進めていく事に捉えなおした。

3.ドンキらしさの発掘

実行したことは大きく二つで、一つはブランドパーパスの策定。もう一つは、それを実行するための組織マネジメントの構築だ。ドンキの独自性は「C(Convenience/便利さ)+D(Discount/安さ)+A(Amusement/楽しさ)」で、楽しさが価値の根底にある。店舗ごとに権限が委譲されているので、どの店舗でもオリジナリティあふれるお店作りをしているのが特徴である。個人の偏愛が溢れる商品で、どこにでもありそう(70点)は目指さない。またドンキの場合は激安ではなく“驚安”。「驚きの楽しさ」を提供することに現場の人は誇りを持っているので、それを象徴するPBに変えていった。ブランドパーパスは、PBが果たす役割は「安いこと」ではなく、まだ見つけていない「驚き」を提供することで、顧客の生活を「驚き溢れる」楽しいものに変えていくことである。こうした言葉を引き出すのに大切なのはヒアリングだ。クリエイター自身が現場の声をよく聞き、そこに着眼することが非常に大切なポイントになってくる。

4.「ド情熱」へ

ブランドロゴは「ド級の驚きを提供する」という意図でリデザイン。パッケージは“驚きのニュースを伝える誌面”と捉え、ニュースが溢れるデザインにした。圧縮陳列でも埋もれない見せ方を設計するなどの工夫を施した。

5.現場浸透による具現化

ここからがもっと大事な話だ。ブランドというモノはキャンペーンのように短命ではなく、長期にわたり、“らしさ”を護り運営され続けなければいけない。だからブランドを運営していく会議体などのしくみをクリエイターが一緒に作っていくことでブランドらしさがプロジェクト全体に浸透していくと思う。例えば商品の起案と前提となる原理を規定し、それに基づいたブランドらしい商品を展開していった。大事なのはそうした型が組織文化として受け継がれていくことだ。そのため商品アイデア発想、ニュース文言、プロモ企画の考え方など、ド情熱の作り方と売り方を現場同士で学び合うワークショップを開催している。現在ではクライアントの皆さんでそれぞれを進めていて、僕らの手を離れてから新しいヒット商品がどんどん生まれていることが最大の喜びである。どういう切り口で世の中に出るか、ニュース性を重視した姿勢が自然と好循環を生み出している。

デジタル顧客接点の拡張

このように、PB=お客様と驚きを創り上げる“ピープルブランド”へと進化させた。これを体現するアクションとして「ダメ出しの殿堂」を始め、ユーザーからの商品に対するダメ出しを商品開発に取り込むようになった。ユーザーの声を読み解くこともクリエイターの大事な仕事だ。現在はNB品への評価も可能で、顧客同士で情報交換ができる商品レビュー&プライシングプラットフォーム「マジボイス」へ拡大している。さらに商品改善のみならず価格改善にも挑み、顧客の欲しいという評価に連動して大幅値引きする「マジ価格」も好評を得ている。

僕達の仕事はアイデア産業で、いろんな現場に入っていくと気づく視点がたくさんある。気付いた視点にどれだけ踏み込んでいくかが大事だし、僕達には踏み込む力もあるので、だからこそクリエイティブがいまいろんな領域で必要とされるのだと思う。