第17回 夏期広告セミナー

「広告業にとっての“マルチスクリーン対応”これから」と題しました第17回OAAA夏期広告セミナーは、平成25年7月17日(水)、電通関西12階大ホールにて100名余の参加者を集めて開催された。
第1部では在阪民放5局が主導し、民放29局が共同研究に参画する「マルチスクリーン型放送研究会」の今谷氏によるTV+セカンドスクリーン、その最新技術についてのレポートを。第2部ではTwitterの活用例やTVとの関係についての紹介を、Twitter Japanの牧野氏にお話いただいた。

第1部:TVの新たな変革のはじまり

電通関西支社・テレビ局局次長      今谷 秀和 氏

なぜ今マルチスクリーンなのか?
今年の2大TVテクノロジーの話題は、次の2つである。
①4K(Ultra HD)
②スマートテレビ≒セカンドスクリーン。

①は現在の4倍の解像度になることで、既に放送機器やTV受信機は入れ替わり始めている。その中で、注目したいのが②である。

スマホやタブレット端末の普及は、それらとTVを組み合わせたセカンドスクリーンの動きを加速する。

TV画面を活用するだけのスマートTVスタイルでは、TV画面上での同時表示は見づらく、スマホのネット機能を利用する方が早いし操作が楽になる。セカンドスクリーンならTVの買い換えも不要で、パーソナライズ化も容易でありトライされ易い。

セカンドスクリーンビジネス事情
「マルチスクリーン型放送研究会」はこうした動きに対し、実用化を目指して2年前に発足。番組連動のコンテンツをリアルタイムに発信。タップするだけで気になるところへ飛んでいける。CMのセカンドスクリーン・コンテンツはすべて保存機能が搭載されているので、広告ビジネスにもプラス。米国ではセカンドスクリーンサミットへの参加企業が急増しており、市場規模は昨年で500億円、2017年には6000億円市場になると予想される。

2013年の7月に放映された日本テレビの特別番組「音楽のちから」ではセカンドスクリーン・コンテンツが登場。嵐のライブ中に音ゲーが実施され、132万人が参加。Yahoo!ジャパンもセカンドスクリーン・サービスに参入。TVで紹介されたお店をスマホで一覧できる「テレログ」を開始している。

マルチスクリーンの広告利用
インターネットの登場で、AIDMAのアクションが“サイト誘導”に変化したが、アクション(検索)を待つという考え方は変わっていない。TVはネットより幅広い層にリーチし到達メディアとしては最大の手段。一方ウェブは幅広い潜在顧客から実購買するまでを絞り込む技術だが、興味のない人には届かない。

つまりTVとネット、互いの弱点を補い合うのがセカンドスクリーンである。潜在顧客と見込み客の間、ゆるい興味のターゲットも拾うことが可能。ネットの利用のセカンドスクリーンでTVは更に強くなれると考える。潜在顧客にアクセスするのがTVで、興味を持った瞬間を逃さないのがウェブだとすると、この一気通貫のマーケティングがマル研の最大の主張である。

<セカンドスクリーンの事例紹介>
・クイズで正解すると割引券がもらえるミスタードーナツのCM
・その場で買えるBIG宝くじ
・地域に合わせた情報が見られる大和ハウスの賃貸住宅「D-room」のCM

マルチスクリーンの広告における効能
その場でサブスクリーンやサイトへ誘導できるので、コミュニケーションの深化が図れ、ダイレクトレスポンス機能により見込み客を逃さない。見るCMから関わるCMへ、ウェブ向きでなかった商品でもクイズやゲームを連動させてファンを拡大できる。

またTVの広いリーチが潜在顧客を掘り起こし、煩わしいアクションはなく、面白ければシェアされ、SNSでさらにリーチが拡大する。

TV-CMの最大の弱みは広告に対する成果が測れないことだったが、ネットとの併用でそれが補われ、広告主への説明責任が果たせる。これによりTVというメディアが再び見直され、広告宣伝費を投入しやすい媒体となるだろう。TVもネットもハッピーになれるような広告媒体を作りたいということが、現在の行動の起点である。

第2部:TV×Twitterの関係      ~活用例と今後の可能性~

Twitter Japan 株式会社   パートナーシップディレクター 牧野 友衛 氏

Twitterは一瞬で世界のすべての人とその人が最も大切だと思うことにつなげる、リアルタイムのコミュニケーションプラットフォームだ。SNSが家族や友人など現実の人間関係のつながりであるのに対し、Twitterではスポーツ選手や芸能人など興味ある人や物事にも直接フォロー可能。ソーシャルメディアだがSNSとは少し違う。

ボストンマラソンのテロで警察が犯人逮捕の発表をTwitter上で公表したように、世界的な事故・事件にもTwitterが活用されている。東日本大震災では猪瀬副知事(当時)がTwitter上で救助要請を知ってヘリコプターを出動させ、米国大統領選ではオバマ大統領が勝利演説の前にTwitterで勝利宣言をした。

アクティブユーザーの実像
現在Twitterのアクティブユーザーは世界で2億人、伸び率は前年比の約2倍。1日4億の投稿数があり、60%がモバイルからの利用。日本では85%以上が携帯やスマホからの利用で、日本は米国に次いで大きなマーケット。ユーザーは10~20代が多く、88%が1日1回以上アクセス。86%が自らツイートを配信している。

Twitterビジネス
Twitterには大きくデータ提供と広告という2つのビジネスがある。最も一般的な使い方としてはリアルタイム検索がある。日本でリアルタイム検索が使われ始めたのは東日本大震災の時。電車の走行や避難所など今の状況を知りたいのに、ウェブ検索ではウィキペディアの情報があがって機能しない。リアルタイム検索ではみんなのつぶやきを秒単位で反映していくので活用されるようになった。

ビジネス向けのデータ利用では企業やブランドに対するつぶやきをリアルタイムに測定できる。NTT docomoなどはツイートデータを利用し一般向けのサービスを提供している。他にも新聞社がツイートデータを用いてネット選挙の分析をしたり、企業別ツイート分析が金融情報サービスに活用されたりしている。

Twitterのプロモ商品
Twitterのプロモ商品には次の3つがある。
プロモトレンド・・・Twitter上で話題になっているキーワードを表示する「トレンドワード」機能で、キーワードを設定した広告を表示させる。
プロモアカウント・・・フォロアーを増やすため、ユーザーが興味を持つ可能性の高い広告をお勧めする機能。フォローされた時点で課金される。
プロモツイート・・・広告主がタイムライン上にツイートを表示して、ツイート拡大を狙う。ツイート内容からさまざまなターゲティング広告が行える。

Twitter×TV
そしていま力を入れているのがTVの領域だ。米国ではTVに関するオープンな会話の95%をTwitterが対応、ユーザーの50%がTVを見ながらTwitterを使用。番組視聴者の33%がツイートをしており、セカンドスクリーンが常用されている。

こうした事象からソーシャルTVと言われ、番組を視聴する人が発信者になっている。投稿を見ることで番組を見ていない人も含めてリーチが拡大する。ある番組の調査では、視聴者数420万のうちオンエア中のツイートが140万、それを目にした数が3100万、週間では2億1900万のインプレッションになったという。

Twitterと視聴率の関連性が明らかになり、ニールセンと共同でソーシャルTVの視聴率動向を測定。秋頃からリーチ指数も提供開始予定。番組に関するツイート数が8.5%増加すると、視聴率が前年比1%増加する傾向も見られた(年代などによって異なる)。

5月に行った日本のユーザー調査では、70%のTwitterユーザーが視聴番組についてツイート。51%が番組のツイートを見て、TVを見るなど何らかの行動をとっている。現在ビデオリサーチと共同で番組への投稿を集めてTwitter上の指標も整備中だ。

アカウント名を表示してフォロアーを増やすなど、番組内上でツイート数を増やす試みも実施している。NHKのNEWSWEB、TBSのNEWS23などのように番組のハッシュタグを表示するのも効果的で、出さない場合と比べて投稿数は約10倍違う。

投票もツイートが増える手法のひとつ。データ放送のボタンではなく、あえてTwitterで行うことで見えるコミュニケーションが行われ、話題が広がりやすい。2012年米国スーパーボウルのMVPの投票ではプレー中のツイート2400万のうち、30%のツイートが広告に関するものだった。Twitterと連動することにより、CMのブランドやエンゲージメントが高まる。インスタント・リプレイを活用した広告表示も新たなリーチ拡大に期待されている。

TVアドターゲティング
今年ブルーフィン・ラブズをTwitterが買収した。同社はTV番組・TV-CMに関するツイートの分析を行う市場調査会社。この技術を活用し、TV広告を視聴したと思われるユーザーにリターゲティングできるサービスをアメリカでは試験的に実施中。日本では公査上、まだ実現不可だが、Twitterの重要な領域として、今後も更なる進化をしていくと言える。

 
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